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「匠の技」と「確かなデータ」で目利き。機械だけでは実現できないリサイクル現場のこだわりに迫る
社員インタビュー

「匠の技」と「確かなデータ」で目利き。機械だけでは実現できないリサイクル現場のこだわりに迫る

興栄商事が手がける「マテリアルリサイクル」では、パソコンやスマートフォン、サーバー関連などの情報通信機器をはじめ、さまざまな製品を回収・選別して適切な廃棄プロセスや再利用化につなげています。

今回は、そのマテリアルリサイクルの現場を統括する生産管理事業部長の蓼沼 耕一郎にインタビュー。身近なパソコンやスマートフォンが、どのようにして価値あるものへ生まれ変わっていくのかを聞きました。外部からはなかなか見えない、ミリ単位のこだわりをお伝えします。

基板の純度を高める「独自の設備」と「見極め」

リサイクルを専門とする私たちの仕事は、一般的には馴染みの薄いものだと思います。まずは興栄商事の生産管理における体制を紹介させてくたさい。

部門としては大きく分けて、「パソコンやスマートフォンなどのIT機器を手解体する部署」、「家電製品や自動販売機などを解体する部門」、そして「当社独自の破砕機を使って基板製品を製造する部署」があります。

「基板製品」も耳慣れない言葉かもしれません。私たちはIT機器などを解体して、そこに使われている基板や、価値の高い金属部品を取り外します。こうしたパーツを破砕機にかけて生み出される「原材料」は、取引先である精錬所において金銀銅といった素材に生まれ変わります。この原材料のことを私たちは基板製品と呼んでいます。

具体的な業務の流れもご説明しましょう。

お客さま先からパソコンやスマートフォン、家電などの基板を回収した場合は、まず中身を検収します。どのような金属が使われているか、異物が混入していないか、危険物がないかなどを見定め、破砕の過程で事故が起きないようにしているのです。IT機器などは手解体でこまかく分け、安全性を高めた上で破砕機を使用していきます。こうした見極めには目利きが必要で、誰にでもできるような仕事ではありません。

http://手解体できめ細かく分類

興栄商事は2つのプラントを保有しており、中には他社では使われていないオリジナルの破砕機も導入されています。これは独自設計で、破砕時のパワーと、一度に対応できる量を大幅に向上させました。検収を経て安全が確認されていれば、どんな形のものでも、一緒に混ぜて壊すことが可能です。

次に磁石を使った機器で、鉄などの金属を除いていきます。この段階では概ね50mm程度の大きさに破砕されているのですが、磁石を使うことで細かな金属も見逃さず、選り分けることができるのです。さらに磁石を高速回転させ、反発する力を利用して、今度はアルミなどの非金属を飛ばしていきます。

専門的な機器の話が中心となりましたが、興栄商事ではこのようにして金属を除き、最終的な基板の純度を高めて、その後の工程を担当する精錬所へと送り出しています。

興栄商事と同規模のプラントを保有する会社は他にもありますが、ここまで精度の高い作業を大量に進められるところは少ないのではないでしょうか。

「なぜそこまで基板の純度にこだわるのか」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

私たちが破砕・選別した基板は、精錬所へ運ばれて金や銀、銅に分けられます。基板の純度が高ければ高いほど買い手の価格も上がるのです。純度が高くても量が少なければ買い手はつきませんが、私たちは一度に大量の破砕・選別を進められるので、買い手のニーズを満たすことができます。

これは利益だけの話ではありません。マテリアルリサイクルを加速させ、長い目で見れば地球環境への負荷を軽減できるという意味でも、基板製品の純度を高められる目利きと独自の設備にこだわることが大切だと思っています。

http://大型破砕機

環境負荷を抑え、リサイクル率を高めるために必要なこと

こうした作業量と質を担保できている背景としては、25年におよぶ興栄商事の歴史の中で、金属類を選別する能力を持つスタッフを数多く育ててきたことが大きいと考えています。

大ざっぱな言い方になってしまいますが、選別するだけなら機械だけでも可能でしょう。しかし、大量の基板を加工する中で出てくる小さな金属が何なのか、それをどのように扱うべきなのかといった見極めは、経験を積んだ人間でなければできません。興栄商事ではそのノウハウを先輩がきっちり教えて受け継いでいます。専門的な研修を行い、何年も経験を積む中で、少しずつ目利きができるようになっていくのです。

もう一つ秘訣があるとすれば、蓄積されたデータです。

例えば「カメラからは何グラムの金が取れるのか」といった、品物や種別ごとに蓄積したデータを私たちは持っています。こうした情報も踏まえ、スタッフの経験則と組み合わせることで、より精度の高い作業を可能としています。データがないものを取り扱う場合は、解体した上で「どんなものが何パーセント含まれているのか」といった分析を行います。

「熟練の職人」と言えるスタッフの目利きと、事実に基づく「確かなデータ」を組み合わせる。このプロセスがあることで、精錬を担当する企業からは高い信頼を得ています。

これは基板に限ったことではありません。興栄商事ではさまざまな製品や廃棄物を回収していますが、何を扱う場合においても、「これは解体したほうがいい」「これは破砕したほうがいい」といった見極めを行うことと、過去のデータを参照することが重要です。

例えば自動販売機を回収した場合、私たちはすべて手作業でリサイクルできるものを見極め、過去のデータを確認しながら選別を進めていきます。重機を使って一気に作業を進めたほうが効率的ではあるのですが、その方法ではどうしても回収できる金属が少なくなりがちで、リサイクル率も低下してしまいます。

環境負荷を抑え、リサイクル率を高めることで、価値の高い商品の製造を極めていくことができます。長年のノウハウと、高度なプラントを有する体制が、取引先に認識していただいている興栄商事のブランドであると自負しています。

そのことを忘れずに、これからも「ひと手間」をかけることを大切にしていきたいと考えています。

誰もが働きやすい環境を整え、ベテランから若手への橋渡しを

私自身は、興栄商事に入社して13年目になりました。もともとは現場にいて、部長職を務めるようになってからは2年近くが経ちます。

「部長」という肩書きは付いているものの、私は興栄商事の中では、まだまだ若輩者だと言えるかもしれません。私よりずっと年上の、熟練した目利きの技を持つベテランが、この会社ではたくさん活躍しているからです。

蓄積された経験が物を言う世界だからこそ、ベテランの存在は本当に心強いですし、お客さまに誇れる興栄商事の資産であると感じています。同時に、これからの興栄商事を担う若手メンバーが着々と増えていることも頼もしく思います。

生産管理事業部長である私の役割は、若手がベテラン陣から知識や技術を受け継ぎ、より安全に、より精度の高い仕事ができる体制を作っていくことです。

ベテランのスタッフが長く活躍してくれているのは、社内の環境や設備を常に清潔に保ち、安全に作業できる状態を維持できているからだと思います。同じ機器であっても、良い状態に保てているかどうかで作業効率は格段に違いますから。

こうした環境や設備が重要なのは、若手にとっても同様でしょう。未来を担う若手メンバーも長く、イキイキと活躍し続けられるように、最大限の努力をしていきたいと思います。快適に仕事ができる職場環境になっているか、個人に過度な負荷がかかっていないか。そんなことに気を配りながら、一人ひとりが活躍し続けられる場を作っていきます。

同時に、昔ながらの「見て覚えろ」というやり方ではなく、ノウハウを丁寧に受け継いでいくための教育体制も重要です。人が価値を生む仕事だからこそ、人を大切にしていきたいと思うのです。

この信念を持ち続けることが、興栄商事のこだわりを受け継ぐためには欠かせないことなのだと信じています。

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